「寝たはずなのに体が重い」
「なんとなく気分が上がらない」
「少し動いただけで疲れる」
こういう状態が続くと、何を直せばいいのかわからなくなります。睡眠、食事、ストレス、スマホの見すぎ、座りっぱなし。原因は一つではないことが多いです。
ただ、生活を整える入口としてかなり現実的なのが、軽めの有酸素運動です。
その中でも、運動初心者や疲れやすい人に向いているのが「ゾーン2」と呼ばれる強度の運動です。
ここで大事なのは、ゾーン2運動を「すべての不調を治す方法」として扱わないことです。体調不良や気分の落ち込みが強い場合は、医療機関への相談が必要です。
一方で、運動不足・座りすぎ・生活リズムの乱れが重なっている人にとって、ゾーン2運動はかなり始めやすい改善策になります。
- 最初に目指すべきは、追い込む運動ではなく「続けられる低〜中強度の運動」
- ゾーン2運動は、早歩きや軽い自転車などで始められる現実的な方法
- 目安は「息は少し上がるが、会話はできる」くらい
- Apple Watchは、心拍ゾーンを確認して運動強度を調整する道具として使える
- まずは週3回・20分の早歩きから始めるのが現実的
- 大事なのは「頑張ること」ではなく、疲れを残しすぎない範囲で体を動かすこと
なぜか体調が悪い人は、いきなり頑張る運動をしなくていい
体調を整えようとして、いきなりランニング、筋トレ、HIITのような運動を始める人がいます。
ただ、普段あまり動いていない人が急に強い運動をすると、疲労感が強く出たり、翌日以降に続かなかったりします。
問題は、意志が弱いことではありません。
最初の強度設定が高すぎるだけです。
運動不足の人に必要なのは、まず「消耗しすぎずに、体を動かす習慣を戻すこと」です。
そこで使いやすいのが、ゾーン2運動です。

きつくない軽い運動は実施が容易で運動継続に有効であり、ウォーキングなどの低強度運動は疲労感が少なく、気分がすっきりすることがあると述べられています。(久保山, 2020)
ゾーン2運動とは何か
ゾーン2運動とは、ざっくり言うと「軽すぎず、きつすぎない有酸素運動」です。
代表的なのは、早歩き、軽いジョギング、ゆるめの自転車、傾斜をつけたウォーキングなどです。
息は少し上がるけれど、会話はできる。汗は出るけれど、終わったあとに倒れ込むほどではない。
そのくらいの強度を狙います。
目安は「会話はできるが、歌うのはきつい」くらい
運動強度を感覚で判断するなら、「トークテスト」が使いやすいです。
CDCは、中強度の運動について「会話はできるが、歌うのは難しい」程度を一つの目安として説明しています。
つまり、ゾーン2を始めるときに、最初から細かい心拍数を計算する必要はありません。
まずは、次の感覚で十分です。
息は少し上がる。
でも会話はできる。
ただし歌うのはきつい。
このあたりを狙えば、運動初心者でもやりすぎを避けやすくなります。
心拍数で見るなら最大心拍の50〜70%前後が目安
心拍数で管理する場合、中強度の目安として最大心拍数の50〜70%前後がよく使われます。Mayo Clinicも、中強度運動を最大心拍数の約50〜70%、高強度運動を約70〜85%と説明しています。
ただし、心拍数は年齢、体力、睡眠不足、カフェイン、薬、体調によって変わります。
そのため、数字だけを絶対視しない方がいいです。
心拍ゾーンは便利ですが、最終的には「きつすぎないか」「翌日に疲れを残しすぎていないか」を見る必要があります。
疲れやすい人にゾーン2運動が向いている理由
強度が低く、始めるハードルが低い
ゾーン2運動の良いところは、特別な運動能力がいらないことです。
走れなくても、早歩きで始められます。
ジムに行かなくても、家の周りを歩けばできます。
運動が苦手な人ほど、「運動=きついこと」と考えがちです。
でも、体調を整える目的なら、最初から追い込む必要はありません。むしろ、疲れやすい人が最初にやるべきなのは、続けられる強度を見つけることです。
運動不足と座りすぎを同時に崩せる
WHOは、成人に対して週150〜300分の中強度の身体活動、または週75〜150分の高強度の身体活動を推奨しています。また、「少しでも身体活動をする方が、何もしないよりよい」とも示しています。
この基準を見ると、「週150分なんて無理」と感じるかもしれません。
ただ、最初から満たす必要はありません。
まずは週3回、20分。
それだけでも、完全に動かない生活からは抜け出せます。
運動の目的を「体を鍛える」ではなく、「座りっぱなしを崩す」「体のスイッチを入れる」と考えると、かなり始めやすくなります。
メンタル不調への補助策としても現実的
運動は、メンタル面にも関係します。
2023年の大規模なアンブレラレビューでは、身体活動は成人のうつ症状、不安、心理的苦痛の改善に有益であると報告されています。
また、2024年のBMJの系統的レビュー・メタ分析でも、運動はうつ症状に対して中程度の効果を示したと報告されています。
ただし、ここで誤解してはいけません。
運動は、医療やカウンセリングの代わりになるとは限りません。
特に、気分の落ち込みが強い、日常生活に支障がある、希死念慮がある、食事や睡眠が大きく崩れている場合は、運動だけで何とかしようとしない方がいいです。

中・高強度の身体活動はうつ症状やうつ病の発症に対する予防効果があると考えられる、と整理されています。
また、うつ症状がある人においても、症状軽減のために運動が有効である可能性がある一方、対象者の特性に応じた対応が必要とされています。(厚労科研, 2021)
まずは週3回・20分の早歩きからでいい
ゾーン2運動を始めるなら、最初はこれで十分です。
週3回。
1回20分。
少し息が上がる早歩き。
最初から毎日やろうとしなくていいです。
毎日やろうとすると、できなかった日に一気にやる気が落ちます。最初は「少なすぎる」と感じるくらいでちょうどいいです。
慣れてきたら、次の順番で増やします。
まずは20分を30分にする。
次に週3回を週4回にする。
その後、余裕があれば坂道や軽いジョギングを混ぜる。
この順番です。
強度を上げるより、先に回数と時間を安定させた方が続きやすいです。

少人数の研究ではありますが、強い運動よりも低めの強度の運動の方が、ストレス軽減に向く可能性が示されています。運動は強ければよいとは限りません。(若林ら, 2019)
Apple Watchでゾーン2運動を続けやすくする方法
Apple Watchは、ゾーン2運動を続けるための道具として使えます。
Apple Watchでは、ワークアウト中に心拍ゾーン、現在の心拍数、そのゾーンにいた時間、平均心拍数を確認できます。また、心拍ゾーンはヘルスケアデータをもとに自動計算され、手動編集もできます。
使い方はシンプルです。
ワークアウトアプリで「屋外ウォーキング」や「屋外ランニング」を開始する。
運動中にDigital Crownを回して、心拍ゾーン表示を見る。
ゾーン2付近に収まるように、歩く速さを調整する。
これだけです。
Apple Watchの価値は、「運動効果を劇的に上げること」ではありません。
自分が今どのくらいの強度で動いているかを見える化できることです。
疲れやすい人ほど、感覚だけで運動すると、弱すぎるか、強すぎるかに寄りがちです。心拍ゾーンが見えると、「今日は上げすぎている」「今日はちょうどいい」と判断しやすくなります。
自分にあった心拍数ゾーンで運動をする方法
ゾーン2付近に収まる心拍数で運動をすればいいのはわかったけど、実際にどうするの?
となると思います。
ここではAppleWatchのワークアウトで実際に設定する方法を紹介します。
ステップ1:自分の最大心拍数を計算する
とても簡単です。
220-(自分の年齢)
を計算するだけです。
例えば、30の場合、220-30=190←これが最大心拍数
ステップ2:安静時の心拍数を引く
どうやって安静時の心拍数なんてわかるの?と思う方もいると思います。
なんと、AppleWatchを付けていると、自動で計測してくれています。
見方は、
スマホのアプリから「ヘルスケア」を開く
↓
右下の「検索マーク」を押す
↓
「心臓」を押す
↓
その中から「安静時心拍数」を開く
すると右のような画面になります。

ここでは、安静時の心拍数が 60 だとすると
190-60=130
この 130 が予備体力というものになります。
ステップ3:実際に自分に合った心拍数を計算する
お待たせいたしました。では以下の式に当てはめてみてください。
予備体力×運動強度+安静時心拍数
運動強度というものがありますが、一般的に脂肪を効率よく燃やせる運動強度が
0.4~0.6
と言われています。
なので、今回はそれぞれの運動強度の結果を計算します。
今回の例でいくと
130×0.4+60=112(最低)
130×0.5+60=125(推奨)
130×0.6+60=138(最高)
となります。つまり、最低は112、最高で138ぐらいの心拍数で運動してくださいね。
という指標ができました。
ステップ4:AppleWatchで設定する
ここからは、先ほど計算した心拍数をもとにapplewatchを付けて運動する際のワークアウトを作成していきます。
スマホのアプリから「フィットネス」を開く
↓
画面下にある「ワークアウト」を開く
↓
ランニング(屋外)のところにある「時計マーク」を押す
↓
画面を一番下までスクロールし、「+」ボタンを押す
↓
「カスタム」を選ぶ
↓
ウォームアップをタップし、「ゴールタイプ」を「時間」にし、時間を「5分」に設定する。
クールダウンも全く同じ設定にする。どちらも「目標」は「なし」。
↓
「スキップを追加」を押し、名前のところは「軽めのジョギング」とし、「ゴールタイプ」を「時間」で「10分」に設定。
「目標」を「心拍数」にし、「カスタム範囲」から、下限を先ほど計算した(最低)である「112」を設定したいけど、5単位でしか設定できないため、「110」として設定する。
上限は先ほど計算した(推奨)である「125」を設定。
↓
また「スキップを追加」を押し、次は「きつめのランニング」という名前にして、
「ゴールタイプ」を「時間」で「10分に」設定。
目標を心拍数にし、カスタム範囲から、下限を(推奨)に、上限を(最高)のに設定する。
するとこのようになると思います。名前は自由に決めてください。
これができたら、後は実際に運動するときにapplewatchでこれを使うだけです。
applewatchからワークアウトを開く
↓
「ランニング」から右上の「時計マーク」を押す
↓
少し下にいくと「カスタム」があるのでそれを押す
↓
先程作成したワークアウトを押すだけです。

Apple Watchの候補
Apple Watch SE 3
Apple Watch SE 3は、iPhoneユーザーがゾーン2運動を始めるには扱いやすい候補です。AppleはSE 3について、常時表示ディスプレイ、速い充電、健康・フィットネス・安全・通信機能を備えた入門機として紹介しています。
向いている人は、iPhoneを使っていて、心拍ゾーンを手軽に見たい人です。
向いていない人は、Androidユーザー、毎日充電するのが面倒な人、ランニング専用機のような長いバッテリーを求める人です。
Apple Watch Series 11
Apple Watch Series 11は、運動だけでなく、睡眠スコア、心拍数、バイタルなども含めて日常の健康データを見たい人に向いています。Apple公式では、Series 11の通常使用時のバッテリーは最大24時間、ワークアウト機能や複数の健康関連機能を備えると説明されています。
向いている人は、運動・睡眠・日常の体調管理をまとめて見たい人です。
向いていない人は、ゾーン2運動の記録だけできれば十分な人です。その場合、SE系や他社のフィットネストラッカーでも足ります。
Apple Watch Ultra 3
Apple Watch Ultra 3は、軽い早歩きだけの人には過剰です。
長時間のランニング、登山、アウトドア、長いGPS記録が必要な人向けです。一般的なゾーン2ウォーキング目的なら、最初からUltraを選ぶ必要はあまりありません。
向いている人は、運動を本格的に続ける予定がある人、長時間のバッテリーや頑丈さを重視する人です。
向いていない人は、まず週3回の早歩きから始めたい人です。
Apple Watch以外の候補
Garmin Forerunner 165
Garmin Forerunner 165は、ランニング寄りに運動を続けたい人に向いています。Garmin公式マニュアルでは、心拍ゾーンをユーザープロファイルから設定でき、最大心拍数や安静時心拍数をもとに手動調整できると説明されています。
向いている人は、ランニングを続けたい人、バッテリーやトレーニング指標を重視する人です。
向いていない人は、Apple WatchのようなiPhone連携や日常アプリの便利さを重視する人です。
Fitbit Charge 6
Fitbit Charge 6は、スマートウォッチというより軽いフィットネストラッカーが欲しい人に向いています。Google公式では、Charge 6はワークアウト機能、心拍数表示、Google関連機能などを備えると説明されています。
レビューでは、軽い装着感やシンプルさが評価される一方、画面の小ささや接続面の不満も指摘されています。
向いている人は、軽くて邪魔になりにくいものをつけたい人です。
向いていない人は、大画面で細かい情報を見たい人、Apple Watchのようなアプリ連携を期待する人です。
ゾーン2運動の注意点
ゾーン2運動は始めやすいですが、万能ではありません。
まず、胸の痛み、強い息切れ、めまい、動悸、失神感がある場合は、運動を続けず医療機関に相談してください。
次に、メンタル不調が強い場合も、運動だけで解決しようとしない方がいいです。運動は補助にはなりますが、診断や治療の代わりではありません。
また、「ゾーン2が最強」と考えすぎるのも危険です。
2025年のレビューでは、ゾーン2がミトコンドリアや脂質酸化能力を改善する最適な強度だとする一般向けの強い主張には、十分な根拠があるとは言えないと指摘されています。
つまり、ゾーン2は「魔法の運動」ではありません。
ただし、運動不足の人が無理なく動き始める入口としては、かなり使いやすい方法です。
まとめ:疲れやすい人は、まず「頑張らない運動」からでいい
体調が悪い、気分が上がらない、すぐ疲れる。
そういう人ほど、いきなり追い込む運動を始める必要はありません。
まずは、週3回、20分の早歩き。
会話はできるけれど、歌うのはきついくらい。
Apple Watchなどを持っているなら、心拍ゾーンを見ながらゾーン2付近を狙う。
それだけで、少なくとも「何も動かない生活」からは抜け出せます。
重要なのは、運動で自分を罰しないことです。
疲れた体をさらに追い込むのではなく、体が戻る余地を作る。
ゾーン2運動は、そのための現実的な入口です。
寝る前のスマホ習慣や睡眠環境も整えたい場合は、関連記事「寝る前10分で脳が蘇る!心のノイズを消してグッスリ眠る習慣」もあわせて読んでみてください。
朝からスマホを見て時間を溶かしてしまう人は、「朝起きて1秒でスマホを見る人へ。時間が消える朝を止める3ステップ」も参考になります。
まずは今日、20分だけ歩いてください。
買うかどうかは、そのあとで十分です。
参考文献
久保山直己「高齢者の健康づくりにおける低強度運動の有効性について」大阪商業大学論集, 2020.
厚生労働科学研究成果データベース「こころの健康のための身体活動(案)」2021.
若林由羽ほか「運動習慣に着目した気分プロフィール検査による運動強度別のストレス値の変化」理学療法学Supplement, 2019.

